新しい発想が出てくる時には、常に仮説が付き物だ。
「もし、コレがこうだったら」→「こういう風にすれば、もっと良くなるんじゃないか」
MIZARのビルドモニターをさせていただくようになって、海猿さんと連絡を取るたびに刺激を受けている事がある。
「仮説の立て方がぶっ飛んでて面白い」
「固定概念に囚われていなくて、常に疑問と検証が身に付いている」
常識の範囲内で仮説を立てても、真新しい発想って出てこないよね。
ぶっ飛んでる仮説には失敗も付きものだけど、そこから得られるモノは未知の体験という宝物。
もの凄い釣行数と検証を重ねてアジングを探究し続けてきた海猿さんの実績から出てくる数々の仮説を、見た目の自己満だけでロッドビルドに精を出してきたボクがカタチにする。
そんな異色のコラボロッド(プロト)ができあがりました。
潮楽 TIDE FINDER 54TiS PROTOTYPE スペック紹介
【ブランク】
マグナムクラフト SM8320 1#+マグナムクラフト ハンドルパイプCP6(印籠継)
【レングス】
5フィート4インチ(1625.6mm)
【ウェイト】
35.5g
【ティップ】
チタンティップ
MIZAR ULTIMATE TOP 17Deep(有効チタン長200mm)
【ガイド】
全て富士工業
バットガイド:T2 ATTG10×1
チョークガイド:T2 KTTG6×1
ベリーガイド:T2 KTTG3×1
ティップガイド:T2 KTTG3×4
トップガイド:T2 KTTG3×1
ALLトルザイト 8ガイド仕様
【リールシート】
カーボンDPS-SKスケルトン
NT-B SYSTEM搭載
ビジュアル紹介
もともと、色んなことを試してみるプロトロッドを作成予定だったので、カラーテーマも謎めいた漆黒にしようと思っていたけど…遊び心が欲しくなり、黒×茶色で大人なロッドにしてみました。
茶色って、意外とどんなリールにも合うと思うんだよなー…。
ロッドネームは、まずボクのアジングロッドシリーズの「潮楽」
そして、TIDE FINDERという良い潮を見つけるのに特化している、DEEPアジング用のロッドネーム。
MIZAR×BABOCRAFTを恥ずかしそうに入れてます…
ブランクのSM8320とハンドルパイプの継ぎ目は、いろいろ悩んだ結果ブランクとリールシートの結合部にしています。
カーボンブレードホースで補強した箇所をチラ見せして、自己満の世界を演出。
ハンドルパイプ部には、筆記体で雑にネームを入れる。
筆記体って、密集してラインを意識するとカッコよくできるけど、単体で入れると何かダサいんですよね。
全体的なバランスと角度が大事。
白文字でリールシート名、ブランク名、チタンティップ名を入れる。
少し角度をズラして外し感を出した下部のゴールド文字で入れているのは、
「Surpervised by Umizaru」
海猿さん監修と入れています。
ブランクスルーのリールシートエンドは開放型。
SPECIALISED FOR DEEP AJING
(ディープアジングに特化)
CLOSE TO BUTTGUID-SYSTEM
(バットガイドがより近いシステム)
→ガンダム脳のボクは、後にNEAR TO BUTTGUID-SYSTEMに変更。
理由は、ユニコーンガンダムのNT-Dに近い名称にしたかっただけの厨二病なので、冷めた目で見てください。
正式名称は、きっと海猿さんが考えてくれるはず…?笑
熱が入って解説が長くなってしまった…笑
【NT-B(NEAR TO BUTTGUID-SYSTEM)とは】
その名の通り、バットガイドをよりリールシート側に設置できるシステムのこと。
簡単に説明すると、リールを装着する際の角度を従来よりもブランク側に向けるシステムである。
そうする事でラインの放出角度を手前に寄せる事ができるので、バットガイドリングへのライン抵抗を増やす事なくバットガイドをより手前に設置できる。
用途や特性に合わせて、今までにないガイドセッティングが可能になるのだ。
富士工業のホームページで「スピニングリールのセンターラインは、ロッドに向かって4度の傾斜がある」と記載されている。
見本で書かれているさまざまなロッドの参考ガイドセッティングも、この4度を前提に書かれているわけだ。
なぜ4度なのか、色々調べてみても明確な理由を見つけることができなかった。
果たして、全てのスピニングリールの傾斜を4度にすることで、全てのジャンルのロッドがポテンシャルを発揮できて、最適なガイドセッティングを出す事ができるのだろうか?
答えは、「NO」だと言う仮説を立てた海猿さん。
全ての釣りジャンルで最適な角度なんてあるわけないと。
実は、10年くらい前から言っているみたい…
海猿さん自身も自らリールに角度をつけるリールシートを試していたけど、サンプルは多い方が良い。
話を聞いて、パッと形に出来そうだったので試しに作ってみたのが今回のリールシートである。
「4度の縛り」の中で最適なガイドセッティングを探すのは、これまでに誰もがやってきていることだろう。
じゃあ、その「4度の縛り」が無くなって、無限に考えられる角度から最適なガイドセッティングを考えて、今までに得られなかった楽しさや快適さを味わえることを考えると、ワクワクしませんか?
と言うのがこのシステムの主旨なのだ。
ざっくりと解説すると…
リアのSKパーツを、角度を付けて装着している。
角度を付けるためには、元々のパイプを通す穴も軸をズラして形成する必要がある。
軸をズラして装着すると、SKパーツの下部がもっこりして美しさに欠ける…
パーミング時に小指の居心地が悪いので、ここで「EVA on EVA」を試みる。
その名の通り、EVAにEVAを貼り付けるだけ笑。
シャープなデザインになって、小指の居心地も良くなった。
フロントのDPSフードも、リールフットに角度がついて装着できるように加工してあるけど、語彙力がないので割愛します…笑
ノーマルのDPS-SKリールシートにリールを装着した時の角度が上の写真の4.8度。
安物の角度計だから、この実数値にあまり意味はない。
要は、NT-Bシステムを搭載したことによって、角度を何度上向きに出来たかが重要なのだ。
写真の通り、NT-Bシステムを搭載した今回のロッドは下の写真の8.1度。
3.3度上向いたと言う事になる。
1度程度じゃ違いがわからないだろうと、少し思い切った角度にしてみた。
この角度を付けることによりラインの放出角度も変わり、本来であればリールフットセンターから650mmから700mm程度がバットガイドAT10の最適な位置になるのに対し、このロッドは500mm、つまり150mmから200mmも手前にバットガイドを設置する事に成功した。
バットガイドリングに当たるラインの抵抗を増やさずに、バットガイドを手前にする事ができたわけだ。
これに対する期待値は…より軽く、より軽快に、より遠く…を実現できるのでは無いかと言う仮説を検証するためのシステムである。
- ロッドパワーの増加
- ガイドの重さが手元に寄るため、軽快感の向上
- バットガイドのサイズを小さくする事が可能になり、ロッド総重量の軽減が可能
- 飛距離低下の防止
前回の釣行時に、飛距離の低下が無いことは確認ができた。
それだけでも大きな収穫だ。
ただ、強風下でのテストだったため、もう一度通常コンディションで検証したい。
ビジュアル紹介に話を戻そう。
ボクのロッドは、基本的にはショートエンド。
リールフットセンターから100mmの軽快仕様です。
前にも書いたけど、整備兵が言っていた。
リアグリップなんてアジングにおいてはただの飾りですよ。偉い人にはそれがわからんのです。
ただし、尺以上のサイズが連発する環境では、手首だけで支えないといけないので腕がパンパンになる。
エンドも必要最低限のミニマムエンドだけど、装飾だけはどうしても譲れない…
バットガイドはフットを削って軽量化しているにも関わらず、ネームをはみ出して貼り付けた上に丸みを帯びたコーティングでせっかくの軽量化を台無しにしているところがボクらしい…
ブランクとチタンティップの結合部。
ここのガイドフットだけはショート化せずに、従来のフットサイズのまま乗せてます。
強度を考えて。
チタンティップ部のガイドは、トップガイド含めて3つ。
トップガイドもKTを利用しているので、見た目がダサい?!
いや、原理的にはこっちの方が良いと思うんだけど、ガイドが回りやすいのが難点…。
重さは35.5g。
グリップを印籠継ぎで継いだり、装飾多めにしては良くやった。
インプレ
【キャスト】すごく柔らかいロングチタンだから、キャストも注意が必要だと思っていたけどそうでもなかった。
チタンティップとリグの反発で、思っていた以上にブランクがしなる。
その反発をうまく活かしてキャストすれば、思っていた以上に飛距離が出る事に驚いた。
ボクの以前のガイドセッティングの、バットガイドAT16と比較して変わらないなんて…
これはいい意味でショックだった。
試してみたリグのウェイトは1.0gと1.5g。
1.0gの方が快適である。
【操作感】
ロングチタンを使用した事がある人は、リールをつけて振った時に「ビロンビロン」と言うイメージを持っていると思う。
ボクのチタン有効レングス190mmのロッドは「ビロンビロン」だ。
しかし、このロッドは違う。
有効レングス200mmと、ボクの手持ちロッドで1番チタンティップが長いにもかかわらず、「ビロンビロン」を感じない。
理由は恐らく2つ。
- 17Deepのテーパーが、先端から40mmは同じ先径の0.56mmであり、軽快感を演出している。
- ブランクのSM8320がカーボン薄巻の急テーパーだから、軽快感が出る。
だと思われる。
ロングチタンを別のブランクで組み合わせてきたボクからすると、操作感だけで見れば17Deepと1番相性が良いのは、先径が1.4mmで急テーパーのSM8320がベストだと思う。
R8326も同じ先径で急テーパーだけど、少し硬さを感じるかなぁ…
ロングチタンを別のブランクで組み合わせてきたボクからすると、操作感だけで見れば17Deepと1番相性が良いのは、先径が1.4mmで急テーパーのSM8320がベストだと思う。
R8326も同じ先径で急テーパーだけど、少し硬さを感じるかなぁ…
リグのウェイトは、1.5gだとティップが入りすぎてダルさを感じるので、出来れば1.0g以下で使いたい。
もしくは、17Deepを10mmほどカットして使ってみると、重めのリグでも幸せになれそうだ。
【反響のわかりやすさ】
潮が早かったり、風が強いとそれだけでティップが追従していく。
風でのノイズが多く感じたり、ティップが入りすぎ(重さを感じて)アワセてしまうこと数回…
これは慣れの問題だろう。
あとは、今までのゼロテンション(ラインを張らず緩まずの状態)の感覚だと、ティップが入りすぎてその状態でのアジからのバイトがボヤけた反響になってしまう。
このティップでのゼロテンションの感覚に慣れる必要がある。
バイトがわからないわけじゃ無いので釣果には影響しないけど、自己満の世界には大事なこと。
乾いた明快な反響の方が気持ちいいもんね。
これも、17deepのチタン先端を10mm程度カットすれば、また違った反響を得られると思う。
ULTIMATE TOPにアレンジを加えて、自分好みの使用感を追求するのも面白そう。
【総評】
とにかく、今まで経験した事が無い細いロングチタンなので慣れるのには少し時間がかかりそうだけど、DEEP アジングを楽しむには絶対におすすめできるチタンティップである。
新たな感覚を味わえて、今1番使ってみたいロッドである事は間違いない。
個人的には、17Deepの先端を少しカットして、自分が幸せになれる長さを探してみたい。
反省点
カーボンパイプの凸を削らなかったので、デカールを馴染ませても横線が目立つ。次回は耐水ペーパーでしっかりと凸部をフラットにしてからデカールを貼るようにする。
フードを外すと、リールフットがスクリューの凸部に当たって角度入りを阻害している。
もう少し深く角度を入れる場合は、リールフットが当たる部分だけでもスクリューの凸部をカットして、深く角度が入るようにしたい。
最後に
アジングの楽しさを追求し続けるには、固定概念を取っ払って考えていかないと、新しい楽しさの発見に繋がらない。どこを目指してるんだ?と問われると、ボク自身もよくわからない笑
でも、個人ビルダーにしかできない効率の悪い遊びも悪くないもんだ。
さて、このロッドをもうちょっとボクが使った後に、海猿さんに送って使ってもらう予定です。
それでは、素敵なロッドビルドLifeを!
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